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甲南多士済々
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堀田 周郎さん(大営56卒)

-日本酒に合うハム造りをめざして-

 

【プロフィール】
1958年 兵庫県姫路市生まれ
1981年 甲南大学経営学部卒業
2000年 有限会社播州ハム工業所 代表取締役
       http://www.ham.co.jp

 
ham01.jpg■ハム、ソーセージ、ベーコンの違い
 ハムやソーセージ、ベーコンの違いってご存じですか?一言で定義するのは難しいのですが、「ハム」は塩漬けした豚肉をくん煙・ボイルしたもの、「ベーコン」は塩漬けした豚肉をくん煙したもの、「ソーセージ」は塩漬けした挽肉を(くん煙)ボイルしたものと言って良いかと思います。
 ただし、これは日本での分類であり、海外で「ハム」と言えばイタリアのパルマハムのように、もも肉を骨付きのまま塩漬けにしたものや、もも肉の骨(Bone)を取り除いて(-Less)造られるボンレスハムを意味し、おなじみのロースハムは厳密に言うとハムに分類できません。ちなみに、ロースハムは大正10年に当時横浜中華街で余っていたロース肉を使って考案された日本オリジナルのハムです。
 また、本場ドイツのソーセージは1000種類を超えますが、血や内臓で造るものや、生の挽肉に塩こしょうをしただけのものもあり、日本の分類では収まりきれないたくさんの種類のソーセージがあります。

ham03.jpg■本物のハムを、本来の食べ方で
  日本の食卓にハムが並ぶようになったのは第二次世界大戦後。それまでハムを食べていたのは一部の富裕層に限られていました。昭和25年に物品税が撤廃されると生産量は飛躍的に伸びましたが、売れたのはプレスハムや魚肉ソーセージといった安価な商品が中心でした。その後より大量により安くという世間の風潮に流され、昭和50年頃から100kgの肉から160~200kgのハムを作る水増しハムが誕生し、残念ながら現在売られているハムの主流となってしまいました。
 本来のハム造りは、肉塊をおいしい食肉加工品へと変貌させる先人たちの経験則と智恵が詰まった伝承の技術です。水増しハムは肉の繊維が壊れてカマボコのような断面・食感になってしまいますし、植物性蛋白や卵白、乳蛋白などの添加物を加えるため、本来の風味とは全く別の食べ物となってしまいます。
 また、ハムやソーセージにはボイル、ソテー、そのまま等、それぞれ一番おいしい食べ方がありますし、ベーコンは必ず加熱調理して食べるといった決まり事がありますが、ご存じない方がほとんどかと思います。
 「ハムって、おいしい食べ物じゃない」と思われる事がハム屋として、一番悲しいことです。本式の製法で作ったハムを、ぜひ本来の食べ方でお召し上がり頂きたいと願っています。

ham02.jpgのサムネール画像■食べる喜びと感動を伝えたい
  私は海外旅行の際に、その国の料理や酒を口にするように心がけています。そしてつくづく思ったことは、「その国、その国の料理と酒は絶対に合う」ということです。日本国内においても、郷土料理と地酒や焼酎が合うことを皆さんもお感じになられていることと思います。ヨーロッパではヨーロッパの人に合ったハム造り、日本では日本の方々に合ったハム造りという、それぞれの土地の食文化に合った味の追求が何よりも大切だと思っています。
 祖父・保次郎は昭和25年、終戦という大転換期を経て「これからは平和な時代がやってくる。食べる喜びと感動を次の世代に伝えたい」との想いから播州ハムを創業しました。おいしいものに出会えた喜び、親しい方と食卓を囲む楽しさには格別なものがあります。愛情あふれる食卓は、豊かな会話の時間を生み出し、心まで満腹にしてくれると私は信じています。
 甲南学園には中学から大学までの10年間お世話になりましたがこの間、物質的な豊かさより精神的な豊かさの大切さを学べたことに感謝しています。これからも創業の想いを継承しつつ、日本酒に合うハム造りをめざして頑張りたいと思います。


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