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同窓会事務局

貴志康一の愛器ストラディヴァリが母校に里帰り

2024.10.20

 昭和初期、華々しく活躍しながら早世した音楽家・貴志康一が愛用したヴァイオリンの名器ストラディヴァリウスが母校に里帰り―。2024年10月12日、甲南学園主催のメモリアルコンサート「愛器ストラディヴァリウスが母校・甲南に響く! KING GEORGE~貴志康一の調べ~」が、甲南大学岡本キャンパスの甲友会館で開かれ、愛器だったストラディヴァリウスの「キング・ジョージ」が貴志作品を奏でました。

 大阪の裕福な商家に生まれた貴志は、小学5年で芦屋に移住。11歳ごろに始めたヴァイオリン研鑽のため、旧制甲南高等学校を中退してスイス国立ジュネーブ音楽院に留学しました。ヴァイオリニストとして活躍後、ドイツで作曲や指揮を学んだ。交響曲や歌曲などを次々に発表して、自作曲でベルリンフィルを指揮するなど活動の絶頂期にあった1937年、病のため28歳で急逝しました。

 今回のコンサートは、当時貴志がベルリン留学時に20歳で入手した「キング・ジョージⅢ」の愛称を持つ1710年製ストラディヴァリウスを使っているヴァイオリニスト石橋幸子さんが、甲南学園関係者と親交があったことから実現しました。石橋さんは、スイスの名門オーケストラ「チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団」に所属し、地元の財団から楽器を貸与されています。石橋さんは、この名器を奏でる貴志以来の日本人で、8年前にキング・ジョージと出合って以来、貴志との対話、そしてこの名器との音楽生活を重ねてきたそうです。

 この日は、スイスでの音楽仲間である塩貝みつるさん(Vn)、江尻南美さん(P)とともに、貴志作品から、あまり演奏されない「海の詩」(Vn/Pf)をはじめ、「南蛮船」「竹取物語」(ノーベル賞で日本人が受賞すると流れる曲)や「かごかき」(Vn/Pf)を披露。ピアノの小品も演奏されました。キング・ジョージは、G線の響きが最高に甘美で、アンコールでは、その魅力をいかんなく発揮するべく「G線上のアリア」と、再び代表作「竹取物語」が優美に奏でられました。石橋さんは貴志作品の録音も積極的に手掛けておられ、演奏後、「貴志とともに母校で演奏できて感無量です」と振り返っていました。甲南にとっても歴史的な夜となりました。

 近年、貴志の再評価は進んでいますが、大正モダニズムの中にあった芦屋の風土に育まれ、100年の時を超えて今なお美しい日本情緒を伝え続ける独特の作品群とともに、音楽家・貴志康一は、もっと世に知られてほしいものです。

(広報部・冨居雅人)


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